Dinosaur FACTory ホームページ
2002年9月14日、開館日に見学してきました。
りんかい線国際展示場駅を出ると、東京ビッグサイトに向かって右手になる。
Dinosaur FACToryのあるパナソニックセンターは、直方体に近い建物。壁
面の一部がアストロビジョンという画面になっているのだけが目を引く。林
原自然科学博物館の石垣副館長へのインタビューを放映していた。
正式名称は、パナソニックデジタルネットワークミュージアム 「林原自然
科学博物館ダイノソアファクトリー」というようだ。その名のとおり、松下
と林原が共同で運営している。「恐竜化石研究のプロセスが間近で体感でき
る。」がキャッチフレーズ。本当にそうか、入ってみよう。
展示は大きく1階と3階に分かれ、エレベーターでつないでいる。携帯情報
端末(PDA)をもらい、使い方を説明してもらう。数人づつまとめてだ。練習
モード画面で覚え、本番へ!
ここから標本倉庫。ガラス棚には全身骨格もあれば、一部のもの、木箱に入っ
ているものもある。それぞれ番号がふってあり、PDAのその番号をクリック
すると画像とともにイヤホンから説明が聞こえてくる。ここの展示だけで、
普通の博物館とは違うのがわかる。標本取扱いについての注意メモが貼って
あったり、ホワイトボードに学芸員の出張予定が書き込んであったりする。
展示の表舞台でなく、バックヤードの雰囲気なのだ。
ブラキオサウルスの足元を廻ると、撮影スポットがある。もちろん写真撮
影は自由なのだが、これはダイノソアファクトリーのカメラで撮影するスポッ
ト。床の足型上に立ち、PDAをブルートゥーススポットで撮影モードにする。
クリックするとシャッターが切れる。この写真は施設内でプリントすること
もできるし、帰宅後、その人の「マイページ」で見ることもできる。
モノリス(モノリット)の積まれた通路を通る。モノリスとは化石発掘法の
一つ。大型化石の周囲を掘り、厚板で囲み、箱とし、石膏を流し込む。反対
にしてやはり石膏で補強し蓋をする。いわば化石の棺おけだ。モノリスの作
りかたについて、数年前の古生物学会で渡部さんがポスター発表していたっ
け。
Ankyro Pelvicと書いたものもある。ウランバートルの自然史博物館の裏で
林原の皆さんが、トラックの荷台から下ろすのを見たっけ。レールをしいて
数人がかり。1トンにもなるものだった。
そして次のコーナーは「ゴビモノリス」。部屋全体、モノリスの内部をイ
メージしている。中に、1995年、モンゴルのゴビ砂漠で発掘時の渡部さん
の記憶が詰まっている。床には化石産上写真。周囲にはフィールドノートや
発掘道具。それぞれPDAで情報を取り出せる。
石垣副館長が発掘スタイルで来館者に説明していた。この場所だけで30分は
遊べるだろう。聞くと、館内に3時間も留まる方も多いようだ。
エスカレーターで3階へ。プレパラボに入る。床にモノリス。大きな頭蓋だ。
説明スタッフが来たので、サウロロフスですね?と確認すると、そうだとい
う。立派なものだ。眼窩には強膜輪まで残っているのだそうだ。驚きだ。テー
ブルには復元した強膜輪が載っている。さらに驚きだったのが、このモノリス
と頭蓋が複製だったこと。本当によくできている。説明スタッフも、並べると
どちらが本物かわからないと言っていた。壁面のシルエットを見ると、かなり
大きい個体だ。タルボサウルスといい勝負だろう。奥ではクリーニング作業を
実体験できる。子どもがスタッフと一緒に作業していた。
次のコーナーでは復元骨格の組立作業。バクトロサウルス骨格を組み立ててい
る。位置や姿勢決めのために仮に金具などで止めてある。ここでも別の説明ス
タッフの話を聞いた。全身の95%ほど揃った、非常に保存状態のよい亜成体個
体。私がモンゴルに数度行った話をすると、逆にうらやましがられた。三番目
のコーナーには組みあがったプロトケラトプス。前肢と上体の位置については
議論があるかもしれない。
3階の2番目のブースは研究ドック。一見すると普通の博物館の展示のように
見える。また展示骨格もモンゴル産とは限らない。しかし、PDAで情報を取り
出せば、それぞれを研究している研究員の研究メモやノートのFACTに触れる
ことができる。わからなければ「大きい!」だけで通り過ぎる骨格も、情報が
加味されて、何度もおいしいものに生まれ変わっている。
とはいえ、モンゴル産化石は見逃せない。プロトケラトプス幼体15体の集団化
石はその白眉。ツグリギン・シレーで発掘されたこの化石、プロトケラトプス
が赤ん坊の頃は集団生活をしていたこと、おそらく親が育児をしていたことを
示すのだろう。成体のプロトケラトプスが恐らく立ったまま生き埋めになった
化石もある。この化石を見てあれっと思ったことがある。尾の端がまっすぐで
なく、とぐろをまいている。私たちが以前、ツグリギン・シレーで発掘したプ
ロトケラトプス化石も、尾の先端がそうなっていた。偶然だろうか、それとも。
この先でPDAを返す。最後はD.I.Gというスペース。ここではいろいろなツー
ルや標本など手にとって楽しめるFACTがある。説明スタッフもいる。あとは、
ブラキオサウルスを見ながら階段を下りることになる。
全体の印象は、楽しいスペースということだ。常設展示だが、何度でも楽し
めるだろう。知的好奇心をくすぐるものがある。子どもでも十分楽しめる。一
方、PDAの使い方を習得できない、あるいは身体障害等により使うことが困難
な方には魅力が半減するだろう。順路も最後が階段なのは、足が不自由な者に
とってつらい。たまたま足を怪我していた私は、係員に理由を言って、エレベー
ターで下りた。
団体にも対応しているが、例えば40人学級4クラスの小学校にも対応できるの
だろうか。PDAの数、施設スペース等若干不安が残る。
なお、初めて行く方は以下の諸点に注意した方がいい。
館内にロッカーはない。1階トイレに行く手前にロッカーがあるので、手荷物が
ある方は入れておいた方がいい。PDAを操作するとき邪魔になる。入口から先、
館内にトイレは3階にあるだけ。今のところミュージアムグッズの販売はない。